海にうつる月



めのまえで


たくさんの悲しいことが


ありました




こころのなかで


たくさんの傷が


癒えました




殺戮のすえに


すべておわったのだから


逢ってはいけない


このおもいは


閉じなければ



また逢えるなどと

おもってはいません

だけど

また逢いたいと

おもっています





さようなら







なごりはつきない

だけど

つぎの扉


ここで

たちどまることは

できない


真綿のような

雪がふる

おもい闇をかかえ

すすみ

忘れるしかない

ゆび



おもいだした


ワンシーンは


まるで


えいがのよう


ほんとうに


あったの





かこは


きろくではない


空にただよう


かけらがつくった





しがみついた


わたしの


ゆびを


いっぽんずつ


はがす















だれか あのひと を




とりまく残酷


まもってあげて


あのひとが


壊れてしまう


このままでは


きっと





うつくしい音が


罵倒となり


襲うでしょう


あのひとを


黙り込む


ことしかできない




手を離される恐怖から


あのひとは


つなぐことを


おそれるでしょう


たくさんのよろこび


遠ざかることを


しっていながら




だれかだれか


あのひとを


まもってあげてください


しあわせになれるように







あなたがたたかうのはそれから


叫べ


凍てつく暗闇と


虚しい時間のなかで




泣け


不確かで


曖昧な空間のなかで




苦しめ


愚かで


虚しい関係の狭間で




芳しい蜜のような


醜い香りが


その首筋から


漂うまで




水のような


心が濁り


底のみえない色に


覆われるまで









                   

あなたをあなたをゆるしてあげます


















海の底 月のダンス




深く蒼い


海底に


一艘の船


のこされた


こどもがたくさん




唄を


うたっていたのだろうか


絵を


描いていたのだろうか




そう


おとなは逃げたの


あなたたちに


愛していると


嘘をついて





ポケットには


おかねがたくさん


あなたたちに


大好きなものを


たべさせてあげると


夢をみせて






寒々しい


イルミネーションの


ひかりを浴びて


麻痺した全身に


狂喜の笑い声


生きているのは


そんなにつらいことなの




海の底へ


美しい


ひとすじの


月のひかりが


とどくことを





かわいそうな


おとなたちに


かがやかしい


明日があらんことを




ゆきの白 ふたりの過去



しばりつけられて


声も枯れてしまった


目はちゅうをおよぎ


足が青白くうごかない


事実は


美しくなんかない





もうすぐ


つめたく悲しい


冬がくる


凍てつく雪は


ふたりの記憶を


忘却からひきずりだす





沈み行く舟は


あなたを外に


出してはくれず





昇る朝日は


あなたを


あたためてはくれず




抱きよせた


いとおしい彼女は


あなたに微笑みはせず




あなたよ とどけ





事実は


美しくなんかない




あなたに



なやむかおが


素敵なひとでした


おもいだすたび


うつむくあなたが


にがくせつなくのこる




なにも語らず


みつめるひとでした


しせんを感じるたび


凍りついた





深遠な闇を


みせてくれるひとでした


闇はあなたを


より美しくする





たぶん会えば


微笑んでくれるだろう


空白の時間を


なにも聞かず


すべてを理解するだろう





ぼくはその


すべてをしまい


つつもうとする


あなたを見るのが


とてつもなく怖くて


会うことが


できないでいます









ひろい集めた欠片


つながりのない時間


その代償を


背負っていくのですね




逃がしてくれた


残酷なことばで


いつか


わかってくれる


期待すらもたず





自由にしてくれた


それを


無償のあいじょうと


呼ぶことも知らず





傷つけることも


悲しむことも


知っていながら





握手もせず


抱擁もせず


箱からだしてあげた


せめてもの


おわびとおれい